シルク印刷サインの特徴・受け継がれるその魅力
印刷と聞くと新聞や雑誌などを想起しますが、建築においてサインや看板で多用されているのがシルク印刷(シルクスクリーン)という技術です。
今回はデザイン部分のみにインクが通る版をおこし、粘度の高いインクをスキージと呼ばれるヘラで対象に刷り込み仕上げるシルク印刷サインについてお話します。
シルク印刷の特徴と利点
しっかりとした形と色を表現
シルク印刷はインクを厚くのせ質感を持たせることができる印刷方法ですので、ロゴや文字、ピクトサイン等のデザインや色をしっかりとアピールすることができます。
印刷対象にのりにくいインク色の場合は一度乾燥させ、再度ズレなく印刷することでよりはっきりとした形と色の表現が可能です。
対象の素材を選ばない柔軟性
版を製作する点では読み物など紙に印刷する平板印刷(オフセット印刷)と共通しますが、シルク印刷の対象は紙だけでなく建築サインに使われる鉄板や木材、アクリル、ガラス、塗装面やシートなど様々な素材に施工が可能です。
また印刷対象の幅が広いだけでなく、立体面やゆるやかな曲線、多少の粗面であっても印刷が可能という点が店舗サインなどでも重宝される所以となっています。
優れたコストパフォーマンス
シルク印刷サインは使用する色の数だけ版を製作する費用がかかりますが、一度作った版は繰り返し使用することができ、一定期間であれば保管して再利用することもできます。
このため使用する色が少ない場面では比較的コストパフォーマンスに優れた技法として知られており、現在でも多くの建築物においてサインや看板、案内表示などで広く採用され日常的に目にするサインです。
優れた耐候性
インクジェット印刷のポスターは、紫外線などの影響を受けやすい屋外において劣化が非常に早いです。
しかし、シルク印刷サインは3〜5年はその色合いを保つ耐候性をもち、また屋内においてはほとんど変色することがない優れた耐久性を誇ります。
シルク印刷サインの施工
作業工程
①シルク印刷サインの製作時は、印刷メディアの養生や清掃から始まりインクの付着を良くするための脱脂を確実に行います。
②印刷する位置を決め、版の枠を押さえます。
ズレやダブりがないよう美しく仕上げる上で枠をしっかり固定することは大変重要なファクターです。
③インクを版にのせ、スキージ(ヘラ)で刷り込みます。
インクの硬さは印刷する模様や文字の細かさなどによって調整する必要があり、スキージを押さえる力加減やスピードなども経験を積んだ職人の技術が発揮される場面です。
大きな図案を印刷する場合は何枚かの版を製作して順番に上記の工程を行いますが、厚いインクの層を乾燥させる時間が必要な為、デザインによっては工事日程が長引く場合があります。
インク
シルク印刷サインのインクは一般的な塗装工事と同じく調色によりあらゆる色を作り出すことができ、同じ色でも印刷する対象によって種類が分かれます。
乾燥時の硬度においても耐久性を考慮してインクを選択し、金属系の対象素材にはより耐久性を高める低温焼き付け専用のインクなどもあります。
また蛍光インクやブラックライト用インク、蓄光インク、ラメやパールなど特殊なインクのレパートリーも豊富で、光の加減で様々な表情を見せる華やかで高級感をもたせたサインの製作も可能です。
複合サイン
シルク印刷サインと違う種類のサインを組み合わせることで、環境やシチュエーションに応じたデザインでその内容を自由に表現することができます。
切り文字サイン+シルク印刷サイン
例えば切り文字サインとシルク印刷サインを組み合わせることにより、シンプルながら人目を引く、より内容が伝わりやすい表示サインが製作できます。
あとがき
近年はプリンター技術の進歩により印刷の選択肢は広がっており、手作業によるシルク印刷は一見アナログなイメージを受けるかも知れません。
しかし、その耐久性と独特の質感から現在でも多くの需要があり、特に表示内容が理解しやすく実用性が求められる表示サインや看板などに適しています。
屋内外を問わず応用性が高くシンプルな施工性が持ち味のシルク印刷サインは、今後も様々なアイデアをプラスしながら私たちの生活に寄り添い進化していくことでしょう。
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