塗装の技術|サインにもたらす価値
大空や海のブルーや山々のグリーンなど心安らぐ自然の色以外にも、私たちが暮らす世界には数えきれないほど沢山の色で満ちています。
それぞれの色は人の感性に訴えかける効果があるとされており、空間演出や商品においてその色を決めることは非常に重要なプロセスです。
例えば会議室など物事を決定しなければならない場所の壁色には、心が落ち着く青色は不向きであるといった、色に関する数々の豆知識を折にふれ教わってきました。
サイン業界においても建物やブランドのイメージを左右する色は非常に重要で、素材自体が持つ色艶を採用することもあれば、着色を前提とした単色素材でサインを製作することも往々にしてあります。
用途や要望に応じたサインを作り出すのに欠かせないのが「塗装」の技術であり、塗装によって形成される塗膜は商品を保護し、耐久性を高める役割も担っているのです。
建築における塗装の工法
色だけでなく柄さえも均一に量産できる現代の建材は、基本的に工場内で製造・梱包され、完成品として現場に搬入され設置されます。
対して建築においての「塗装工事」は無塗装の建材や意匠が他業種により設置された後、現場において塗装仕上げを施す一連の工程を指します。
一般的には養生から下地処理・色付けまでが塗装工事の工程で、設計や現場の状況、仕上げの種類によって手塗りや吹付けといった工法が選択されます。
手塗り工法
手塗りは塗装用の刷毛やローラーを使って人の手作業により塗装する昔ながらの工法で、仕上がりにムラができやすい刷毛で広面積を塗ることはほとんどなく、面材やローラーの入らない入隅などに刷毛を用いて色付けするのが一般的です。
外部の塗料は耐久性や色艶など用途に応じて様々ですが、屋内現場においての塗装には主に匂いの少ないアクリル系の水性塗料が使用されます。
吹付け工法
吹付けは空気を圧縮して送るコンプレッサーと塗料をカップに貯め噴霧するエアスプレーガンを使い、塗りムラのない美しい塗装仕上げができる工法で、多くの製造現場でも採用されています。
建築現場では音や塗料の飛散などに注意が必要な吹付け工法ですが、広い面積や起伏のある対象にも適しており、塗装ガンや材料の種類を使い分けることでパターンをつけた仕上がりにすることが可能です。
コテ工法
壁面などに粘度の高い専用の塗材を厚めに塗り付け、左官コテやパターンごとに適した道具によって起伏のある模様をつける工法です。
仕上げは1回きり、職人の経験が頼りでやり直しや同じパターンの再現はできません。
塗材の扱いに慣れた塗装の職人が仕上げることもあれば、日常的にコテを使う左官職人が仕上げることもあります。
焼付け塗装
焼付け塗装は金属パーツに対して用いられる工法で、美しい仕上がりと塗膜のもつ優れた耐久性が特徴です。
焼付け塗装を施すには焼き付け炉が必要で、専用の塗料を吹付け高温で化学反応をおこすことで、硬度と密着性が高まり素材の劣化を防止します。
発光サインの塗装
発光するLEDを光源としたサインにも塗装の技術は使われています。
好みの色に仕上げることは勿論のこと、本来発光する樹脂部分を部分的に塗膜で遮断することにより、発光面を自由にアレンジすることが可能です。
また塗膜の透過性を調節することで、お好みの面がほんのりと色付き発光する雰囲気のある演出も一般的に採用されています。
サインの価値を高める塗装
塗装技術を用いて仕上げるサインのバリエーションは実に豊富で、特殊な塗料を用いて仕上げるサインは素材の耐久性だけでなく、美しいビジュアルでその価値を高めます。
液体金属塗料
溶かした金属から成形する鋳物製品は鋳型の製作から始まり、製品の完成度を左右する鋳型の製作など多くの工程には膨大な時間とコストを要します。
樹脂や木材など精密加工が可能で軽量な非金属の素材をあたかも金属製のように仕上げる液体金属塗料を使うことにより、よりスピーディに現場施工性にも優れた美しいサインの製作が可能です。
塗装とサインの設置
塗装の種類と工法は多岐にわたりますが、完成品として納入・設置されることが多く、店舗やブランドの顔となるサインに施す塗装は、前述した現場塗装よりもさらに繊細な仕上がりが求められます。
大型サインの架台などは事前に設置され現場塗装されることもありますが、サイン本体は製造工場内に設けた特別な塗装ブースで仕上げることが多く、サイン設置の工程はほとんど全体工事の落ち着いた最終のタイミングです。
あとがき
現在のサインはあらゆる分野の技術と工法を取り入れ、塗装仕上げでも金属のような重厚感のあるサインを低コストで製作することが可能です。
様々な技法との組み合わせで無限の可能性を秘めるサイン製作ですが、仕上がりを大きく左右する様々な塗装の手法を取り入れたサインを検討してみるのもいかがでしょうか。
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