NCルーター|サインを美しく仕上げる加工機
繊細な造形を求められるものづくりの現場では、多様な素材をより効率的に美しく加工する道具や電動工具、機械が進化してきました。
古来より木工造作の分野で使われる大工の鑿(ノミ)や鉋(カンナ)などの切削道具が現代も受け継がれる一方、手道具では困難な加工をスピーディに施すトリマーなどの電動工具が普及し、正確で大量生産も可能な大型加工機の使用も一般的になりました。
街中のいたる所でその存在をアピールするサインにもまた、多くの専門的な工程と加工技術が盛り込まれており、素材を傷めず精密な造形を可能にするのがNCルーター加工機です。
さまざまな切削工具・機械
素材の一部を削り取り加工する電動の切削工具や大型機械は、モーターで高速回転する軸先端に取り付けるビット(刃)を変えることで様々な形状の加工が可能です。
数ある工具や機械、ビットの種類や形状は、それぞれの用途や目的に合わせた物をその都度選択する必要があります。
トリマー
トリマーはDIYなどでも人気のミニルーターを除けば、片手で扱う最も小さな部類の電動切削工具です。
加工現場では木材や化粧板の切断や溝切りに使用されることが多く、定規や型板と併用して使用される場面も多々あります。
また同じ角度と大きさの面取りをする必要がある家具や什器製作などの工場では、面取り専用など複数台のトリマーを駆使して作業する職人がほとんどです。
ハンドルーター
ハンドルーターは溝切りやホゾの加工に使用されることが多く、本体がトリマーよりも大きく強力なモーターを搭載しており、両手で支えて扱うのが特徴です。
トリマーがビットの出をカバー固定で決め込み作業するのに対し、ハンドルーターは溝深さを決め込んだ上で本体を上下させ少しづつ切削することができるため、素材の焼けや溶解、刃の焼き付きや折れなどを予防し仕上げることができます。
NCルーター加工機
NCルーターの本体は小型のタイプでも先述した電動工具と比べて格段に大きく、持ち運びが困難なため基本的には工場内に設置して使う切削機械です。
樹脂やアルミ複合版・木材など様々な素材に対応でき、文字や複雑なデザインもデータを入力すれば自動的に美しい加工が完了するため、手作業と比べて仕上がりが格段に早く、完成品の精度に差異が少ないのが大きな特徴です。
NCルーターによる加工
NCルーターの“N”はNumerical(数値)・“C”はControl(制御)を意味し、ルーターはパソコンなどのネットワーク接続機器の他に「彫刻機」といった意味合いがあります。
つまりNCルーターはその名が示すとおり、ものづくりの現場において素材の製作データを入力し、その通りに加工する機能を備えた切削機械のことです。
ちなみにNCルーターは「CNCルータ」と呼ばれることもあり、これはComputed(コンピューター)の数値制御機能を意味しますが、コンピューターが搭載されているNC装置もあるためはっきりと区別しないことも多いようです。
NCルーターで加工を行う際の主な工程は、大きく次の2つになります。
①数値制御
まずはNCルーターに搭載された数値制御装置で、実際に加工するデータをCADなどから作成し、素材や形状に合わせた加工の速度などを設定します。
かつて数値制御装置が誕生するまでは手作業で加工機を操作していましたが、現在はコンピューター制御によって自動的に正確な加工ができるようになりました。
②加工
実際の素材加工は、NCルーターの加工装置を使用します。
数値制御装置に入力した「NCプログラム」と呼ばれるデータ通りに動き、精密な曲線や穴開け加工などを行うのが加工装置です。
手作業では困難な複雑なデザインも形にすることが可能ですが、シンプルなプログラムであれば、オペレーターが制御装置に直接入力して動かし加工する場合も多くあります。
NCルーターはコンピューター制御でプログラムを管理するので、一度作成したデータは繰り返し使うことができ、同じ品質で大量に製品を製作することができるのも大きな利点の一つです。
NCルーターの加工バリエーション
NCルーターはさまざまなカットや切り抜きが可能で、素材やデザイン、技法の組み合わせで無限のバリエーションが生まれます。
素材
アルミや真鍮などの軽金属をはじめ、ABS樹脂やアクリル、塩ビ板やアルミ複合板、マグネットシート、スチレンボードや木材など幅広い素材に柔軟に対応することができます。
デザイン
立体的で存在感のある文字や記号はもちろんのこと、テーパーカットを用いたロゴや、細やかな絵画などのくりぬき加工や、あらゆるRの曲線などを自由に表現することができます。
あとがき
NCルーターによって美しく切り出された素材は、塗装やメッキといった装技術によって更に美しい製品として生まれ変わります。
機械による加工は手作業よりも簡単に思えますが、実際は操作技術や素材を知り尽くす探究心や、品質を維持するため細部にまで気をくばる集中力も求められます。
多くの工程と日々の努力によって生み出されるサインは、これからも常に進化していくことでしょう。
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