3D加工技術|ものづくりで活躍する3Dプリンター
ものづくりにおいて金型や切削機械を必要とせず、3Dキャドなどのデータ入力から複雑な立体形状を自動で製作することができる3Dプリンターの技術。
夢のようなこの技術は、虫眼鏡が必要なほどの微細な部品の製造から、人が暮らす住居の建造に至るまで幅広く活用されており、医療や食品など様々な分野でも実用化されています。
3Dプリンターの歴史
現代にも通ずる“光造形”と呼ばれる初期の3Dプリント方式は、日本の技術者が印刷技術の応用から立体的な造形技術を開発したとされています。
その後20世紀後半にはすでに実用化されていた3Dプリンターですが、当時は大変に高価であったこともあり、自動車や家電など工業製品の試作部品を製作するなど一部の大手企業の製造現場が主だった活躍の場であったようです。
21世紀初頭にはアメリカで取得されていたSLA方式やFDM方式といった3Dプリント技術の特許が切れ、その出来事を皮切りに世界中の企業が市場へ参入、かつては特別な存在であった3Dプリンターの一般化が一気に加速しました。
現在は趣味のツールとして個人が気軽に購入できる安価なものから、最先端と言われる超高性能な産業用プリンターまでその種類とグレードは多岐にわたります。
3Dプリンターの種類
3Dプリンターによる造形は、基本的に素材を足元から少しずつ積み重ねて形作ってゆく積層式で、ケーキのデコレーションのようなイメージです。
機器の種類は扱う素材と造形方式によって多様化しており、製造する対象の用途と求める精度に対応することが可能な機器を選択することができます。
FDM方式(材料押出法)
FDM方式は3Dプリンター業界で最大のシェアを誇る、アメリカのStratasys社によって開発された方式で、同社の商標でもあります。
現在の3Dプリント方式の中で最も一般的で、近年急速に市場に出回った廉価な3Dプリンターの多くはFDM方式を採用した装置です。
ノズルの先から溶かした樹脂素材を台に向かって押し出すグルーガンのような機構で、素材を途切れることなく積み重ねながら立体を造形していきます。
光造形方式(液槽光重合法)
3Dプリンターの元祖とも言える最も歴史がある方式で、先述したSLA方式も数ある光造形法に属する方式です。
レジン(光で硬化する特性を持つ樹脂)で満たしたプールの中にステージを設け、上または下から照射する光で1層づつ硬化を重ねて立体を造形していきます。
近年ではアクセサリーなどを手軽に作れるレジンが流行しましたが、紫外線を照射して硬化する仕組みはこれと同じです。
インクジェット方式(材料噴射法)
材料噴射法とも呼ばれるその名の通り、噴射した素材を光で硬化させながら積み重ねていくのがインクジェット方式です。
家庭用インクジェットプリンターのように複数の色を同時に噴射することでき、カラーで様々な質感を表現することができるためリアルで繊細な造形が可能です。
光で硬化させる方式の特性として太陽光などによる劣化の懸念はありますが、現時点では人々が思い描く未来の夢ツールに最も近しいものかも知れません。
バインダージェット方式(粉末接着方式)
材料を噴射するインクジェット方式に対し、通称バインダーと呼ばれる結合剤を噴射することで硬化させ造形するのがバインダージェット方式です。
着色が容易な石膏を素材とする造形物の製作から始まり、現在では金属やセラミック・樹脂などにも応用が進み、幅広いジャンルで活用されています。
BMD方式
取り扱いが難しい金属粉に対応する画期的な手法で金属の造形物を製作することを可能にしたのがBMD方式です。
製品として完成するまでには段階を踏む必要があり、まずは3Dプリンターで金属を混入させた材料を熱で溶かしながら造形し、続いて専用の機器で脱脂、最後に高温で焼結することで金属の性質を生み出します。
3Dプリンター自体はFDM方式ですが、これら3工程に必要な専用機器がシステム化された商品も販売されています。
パウダーベッド方式(粉末床溶融結合法)
こちらも金属粉などを扱うことができる方式で、BMD方式が登場するまでは金属を造形することができる3Dプリント技術として有力視されてきました。
ステージに金属粉末を敷きつめ、レーザーや電子ビームを熱源とし照射することで素材を焼結させ造形します。
シート積層法
材料を積み重ねる積層式のイメージに最もピッタリなのがシート積層法で、PVC(ポリ塩化ビニル)や金属などの薄いシートを貼り合わせた後、レーザーカッティングで造形します。
他の3Dプリント方式のように化学反応などを伴いませんが、カットした切り落ち部分の材料ロスが出るのも特徴の一つです。
まとめ
未知なる可能性を多分に秘めた3Dプリントの技術は、サイン製作の現場でもすでに実用化されており、今後も益々の期待がかかる分野です。
進化を続ける加工技術とクリエイター達の発想力が相まり、現在は想像もつかないようなサインがお目見えするのもそう遠くない未来の話なのかも知れません。
一覧へ戻る